夫のモラハラが原因で離婚調停に発展。無事離婚に至った渡部です。
自分が「離婚したい!」と思っても、相手が「NO!」と言えば離婚は成立しません。
しかし、理由(原因)によっては調停や裁判で離婚を成立させることができます。
民法で決められた5つの離婚理由について、調停離婚経験者の私が個人的見解も踏まえつつ説明していきます。
弁護士事務所のサイトなどでは、内容が専門的すぎたり問い合わせを促すための営利目的の印象を受けることがあります。
法律絡みはわかりやすく噛み砕いてくれないとわからない…
この記事では離婚経験者の一般人の私が、できるだけ多くの人が理解しやすいように解説します!
さっそく離婚できる理由とできない理由を見ていきましょう。
離婚の種類と民法で定められた離婚原因(民法770条1項)
離婚にはさまざまな種類があります。(別記事参照:さまざまな離婚の種類)
お互いに合意し離婚届を出すことで、離婚できる「協議離婚」が日本で最も一般的です。
しかし、相手が離婚を拒否する場合もあります。
私自身も相手がモラハラ夫であったため、話し合いができずに調停となりました。
自分にとって不利な話をされると怒りが収まらず、手をあげる人でした。
相手が離婚を拒否する場合は、当然離婚はできません。
その場合、調停を行い家庭裁判所で話し合うことになります。
家事手続257条で定められた「調停前置主義」のため、突然離婚裁判を開くことはできません。
大まかな流れは、離婚調停を行い、成立すれば離婚が成立、不成立であれば離婚訴訟を起こし、離婚することになります。
<大まかな流れ>
・離婚調停→(成立)→離婚
・離婚調停→(不成立)→離婚訴訟→離婚
調停は、話し合いの場であるため、相手が断固として合意しなければ成立せず、離婚することができません。
この場合、一般的には離婚訴訟(離婚裁判)に発展することになりますが、民法上で相手が離婚を拒否していても、離婚できる理由が5つあります。
これらは、「具体的離婚原因」と「抽象的離婚原因」という2つのジャンルに分類されます。
具体的離婚原因
民法770条1項 1号~4号にあたります。
1号 不貞行為
2号 悪意の遺棄
3号 3年以上の生死不明
4号 強度の精神病
詳細は後ほど説明します!
抽象的離婚原因
民法770条1項 5号にあたります。
婚姻を継続し難い重大な事由とされています。
“抽象的”とされているぐらいなので、裁判官の裁量によって判断が異なりがちな印象です。
不貞行為(民法770条1項1号)
ここからは、具体的離婚原因(民法770条1項 1号~4号)と抽象的離婚原因(民法770条1項 5号)の詳細を見ていきましょう。
■不貞行為
民法770条1項1号(具体的離婚原因)
不貞行為=異性との性的交渉を指します。
この行為が一回きりのものか、何度も繰り返されるものかは問題ではありません。
最近では、同性同士の性的な関係でも不貞行為にあたるとされるようになりました。
以前は、同性愛は不貞行為にはあたらないとされていましたが、社会的な認識が変わってきたためです。
実際に同性同士の性的交渉でも「不貞行為にあたる」とする判決も出ています。
さまざまなブログを読んでみると、浮気された人が不貞行為を立証することが本当に大変だとわかります。
不貞行為は、密室で二人きりの場所で行われるため、本人同士にしかわからないことが多いです。
だから言い訳されがち!
例えば、ラブホテルに入っていく様子を写真に撮ったとしても、「部下の仕事の相談を聞いていただけ」といった無理がある言い訳をされることもあります。
そのため、LINEなどの証拠をしっかりと残しておくことが大切です。
悪意の遺棄(民法770条1項2号)
■悪意の遺棄
民法770条1項2号(具体的離婚原因)
正当な理由のない同居・協力・扶助義務を放棄することを指します。
たとえば、配偶者や子供がいるにも関わらず、他の女性の家に泊まり込んだり、実家に帰って生活費を負担しなかったりすることが挙げられます。
正当な理由のない同居の遺棄!
ただし、DVなどの理由で実家に避難する場合は正当な理由のない同居の放棄にはなりません。
また、健康で働かず、家事・育児を放棄することも悪意の遺棄とされます。しかし、「悪意」という言葉の通り、相手が故意であることが前提となります。
つまり、放棄する側が悪意を持って行動した場合に、相手側に悪影響が出ることを想定して法律が規定されています。
私の場合は、夫のモラハラにより日常生活が困難となり、夫の仕事中に逃げて別居しました。
調停でこれを「正当な理由のない同居の放棄」と指摘されることはありませんでした。
※モラハラ夫側には「妻が勝手に出て行ったのに婚姻費用を払う必要はない」と主張されましたが、この主張は通りませんでした。
3年以上の生死不明(民法770条1項3号)
■3年以上の生死不明
民法770条1項3号(具体的離婚原因)
最後に音信があった時から起算して3年、配偶者の生死不明の場合を指します。
生存が確認できている状態での音信不通や行方不明の状況はこれにあたりません。
1、2年の生死不明状態だとこの理由での離婚請求は通りませんが、同居義務違反を怠った悪意の遺棄(2号)や、婚姻を継続し難い重大な事由(5号)として認められる場合があります。
強度の精神病(民法770条1項4号)
■強度の精神病
民法770条1項4号(具体的離婚原因)
回復が困難な「強度」の精神病を患っている場合を指します。
強度の精神病を患っていると、夫婦の協力扶助の義務を継続することができないため、離婚が認められます。
「強度の精神病」は、統合失調症や躁うつ病などであり、回復が困難かどうかは医師など専門家の鑑定結果が判断材料になります。
婚姻を継続し難い重大な事由(民法770条1項5号)
■婚姻を継続し難い重大な事由
民法770条1項5号(抽象的離婚原因)
婚姻生活が破綻し、関係の修復が困難な場合を指します。
それって全部の離婚理由にならない?
具体的な例がないとわかりにくいなぁ…
裁判所が下した判決の中で、以下のような内容があります。
・暴行、暴力、モラハラ
・重大な侮辱
・不労、浪費、借金
・犯罪、服役
・性的不満、不一致
・宗教活動
・性格の不一致
司法統計によると、離婚調停の申し立て理由の1位は「性格の不一致」であり、ほかの理由も性格の不一致に帰着することが多いようです。
また、異常な性行為を強要する場合や家庭が崩壊するレベルの宗教活動を行う場合も、離婚事由として認められることがあります。
最近ではモラハラも増えており、モラハラの場合でもDV支援措置の対象となり、住民票の閲覧制限をかけることができます。
有責配偶者からの離婚請求について
「有責配偶者」とは、離婚の原因を作った側のことで、不倫なら浮気をした側、DVなら暴力を振るった側が該当します。
通常、有責配偶者は自分から離婚を請求することはできません。
例えば夫が浮気したとして、浮気相手と結婚したいから妻と別れたいと言われても、妻が拒否すれば裁判に発展しますが、裁判官から離婚を認める判決が出されることはまずありません。
なぜなら、そうしたら浮気された側は不当に損をするからです。
ただし、別居期間が長期間にわたった場合は、有責配偶者からの離婚請求が認められることがあります。
判例によって期間はバラバラですが、同居期間との対比がされることが多いです。
同居期間が短い場合は5年程度、それなりに長い場合は10年以上など、具体的な期間は判例によって異なります。
離婚できる・できない法律を知って賢く判断しよう
離婚には、法律で定められた離婚原因が必要です。一方で離婚が認められない場合もあります。
民法の内容や判例を踏まえ、この記事では離婚できる理由とできない理由を解説しました。
もし相手が離婚を拒否している場合でも、法律で認められた理由があれば離婚することができます。
有責配偶者からの離婚請求は基本的に認められないということも覚えておきましょう。
性格の不一致や浮気などの理由があっても、裁判で認められるかどうかはケースバイケースです。
記事を読んで、自分がどのような状況にあるのかを理解し、離婚をするかどうかの賢い判断をすることが大切です。